<8月>

<2011年8月~2025年8月>
2021年8月25日
◎歩いては行けぬ故郷盆の月(らてん)
 対策といふ名の無策つくつくし(らてん)
 休暇明子らの手足の長くなり(真弓)
 乗り継いで二輌になりて墓参り(りん)
 翔ぶ空のなき地見限る蜻蛉かな(りん)
 対岸の点りはじめて秋夕焼(乃々)


 椅子こんな低かつたつけ休暇明(ふく) 
 しぶき掛かりて競泳を追ふカメラ(典子) 
 飛び込みの髪を広げて浮かびくる(典子) 
◎絵葉書の踊る字褪せて凡の月(乃々) 
◎蜩や右手にチョークけんけんぱ(真弓) 
 野分まえ猫の対策本部長(真弓) 
 柔道の畳乾されて?の声(典子) 
◎敗戦日手引書読みて花育て(りん) 
◎八月の瘡蓋の切れ端散つた(ふく) 
◎朝顔や夕まで持たぬテレワーク(凡) 
 感染症対策本部秋暑し(ふく) 乃々
 ゴンドラの西日に溺れゆくごとし(典子) 
 夏燕とぶ物干しの段違ひ(典子) 乃々
 流燈や子を守(も)るやうに対となる(りん) 
 秋日傘こどくな影は吾のかたち(乃々) 
 深く息吐いて寝る子の終戦日(ふく) 
 八月や今日は死体の役の人(乃々) 
 山寺の読経に合はせて法師蝉(凡) 

2020年8月23日
◎蛙飛ぶ力浮葉をまはしけり(典子)
 やせっぽちの力負けなり宮相撲(真弓)
 繻子帯に扇一本差すゆるみ(典子)
 心にも星飛ぶ原野ありにけり(典子)
 震災忌書棚の本を縦にする(ふく)
 飾り切りされてお重の林檎かな(真弓)
◎大見得の強き目力菊人形(らてん)
 心にも星飛ぶ原野ありにけり(典子)
 ビル風や三角形の秋の空(真弓)
 まらうとの居らぬ客間や花木槿(らてん)
 秋暑し両手を塞ぐエコバッグ(らてん)
 枝豆の莢のうぶ毛の立つてゐる(ふく)
◎蜻蛉の両眼にあふるる力かな(ふく)
 海色のシャンプー買つて大暑かな(らてん)
 にぎやかな教室の隅休暇果つ(ふく)
 大見得の強き目力菊人形(らてん)
 日常は空気のごとし秋の空(凡)
 枝豆の莢のうぶ毛の立つてゐる(ふく)
◎まらうとの居らぬ客間や花木槿(らてん)
 繻子帯に扇一本差すゆるみ(典子)
 心にも星飛ぶ原野ありにけり(典子)
 蛙飛ぶ力浮葉をまはしけり(典子)
 セメダイン匂ふ短き夏休み(典子)
 図書館の中庭に影秋暑し(真弓)
 使われぬポイントカード原爆忌(らてん)
 金曜の仕事終わりの秋の雷(真弓)

2019年8月24日
門柱に今も父の名小鳥来る(清吾)
置き去りの自転車に錆蝉しぐれ(海峰)
月煌々車は鍵で眠らせて(清吾)
空蝉のなほ青空をみつめをり(すずめ)
四世代揃ふ家なり今年酒(美雀)

秋澄むや雀が甕を覗き込み(すずめ)
今日のこと忘れし母や菊膾(洋子)
新涼や車掌の声の歯切れよく(すずめ)
秋灯やまだ捨てがたき本ばかり(清吾)
戒名をなぞる母の手盆用意(洋子)
父母の墓石照らせよ盆の月(海峰)」

心電図の波は正常涼新た(莊太)
ビリケンが紐で縛られ台風来(美雀)
片蔭の途切れ気重な一歩出す(莊太)
墓参り花火消す水用意して(洋子)
鈴虫を贈る波長の合ふ人に(清吾)
大皿に煮染一杯終戦日(洋子)
新涼やつかずはなれず舟二隻(布香)
秋風や吊るされてゐる植木鉢(すずめ)
雷光の欄間を通り抜けてきし(布香)
紙製のストローを刺す処暑の夜(海峰)
まつさらなキャンバス据ゑて涼新た(清吾)
つんつんと水に卵を鬼やんま(布香)
校庭にバットの破片夏休み(海峰)
満月を呑まむと鯉の口の幅(美雀)

書割も古びてきたり村芝居(雄作)
柱時計の振子が消えて夕月夜(典子)

2018年8月25日
秋扇出し営業の顔となる(清吾)
刷り立てを積み込む荷台鰯雲(秀子)
鼻筋を刷毛で作りて村芝居(清吾)
八朔の海につらなる枇杷畑(洋子)
採血の椅子に吸盤秋暑し(美雀)

クレームを聞きし受話器の汗まみれ(布香)
もたれたき柱のなくてちちろ虫(美雀)
秋めくや刷毛で卵黄さつとぬり(布香)
抱瓶の腹の魚の絵秋めきぬ(秀子)
台風過コーヒー豆を買ひ足しに(海峰)
台風圏に大阪駅の屋根幾重(清吾)」

刷り上がる学級新聞花カンナ(美雀)
エンディングノートにへそくり蚯蚓鳴く(美雀)
刷り終へし広報ずしと秋暑し(布香)
小鳥来る刷毛のペンキの乾びたる(清吾)
秋うらら三角定規の穴は丸(美雀)
ゑのころや工場跡地のこれつぽち(布香)
残暑の夜スープの素のとけにくし(すずめ)
狗尾草やをさななじみが恋人に(秀子)
秋澄める金次郎像にもまぶた(すずめ)
バウムクーヘンの皮ちまちまと剥き秋思(すずめ)
煙突は煉瓦積み上げ赤蜻蛉(秀子)
薬局の十字は緑秋はじめ(莊太)
台風圏こだまはじつとのぞみ待つ(布香)

広告の裏のつるつる小鳥来る(雄作)
秋風や使はず古ぶ化粧刷毛(典子)

2017年8月26日
枡あふれ小皿を溢れ新走(清吾)
花いたどりがれ場に尻をつけ下る(洋子)
有刺鉄線猫に越えられ秋暑し(すずめ)
驟雨中読むはずのない本を買ふ(海峰)

そぞろ寒検尿カップ置く小窓(清吾)
秋天や小脇に挟みヨガマット(布香)
小説の頁繰る風夏座敷(美雀)
玄関まで先づは草抜く盆帰省(布香)
麻婆豆腐の香のつんと厄日かな(布香)」

細長きパンを小脇に野分晴(清吾)
秋高しスパイスミルのきゆると鳴る(莊太)
新米のほろほろ崩る塩むすび(美雀)
木の実降るワークショップとなる蔵に(洋子)
ナイフ研ぐ腕の筋肉健次の忌(すずめ)
秋ともし屋根裏部屋の小さき窓(秀子)
鳥渡る塩を少々パスタ茹で(莊太)
小悪魔と呼ばれし過去も生身魂(清吾)
緑地課のしやがむ手作業秋暑し(布香)
服薬の数のまた増え秋茜(海峰)
米粒に小さき仏秋の風(莊太)
墓石を指でなぞりぬ秋燕(洋子)
納骨堂銀杏黄葉のふところに(秀子)
よく売れる頭落されたる秋刀魚(海峰)
夏の月ネバーランドはすぐそこに(すずめ)
電柱のそれぞれに影秋立ちぬ(秀子)
秋暑し頭痛にひと日籠りけり(美雀)

もう風になるしかないぞばった飛ぶ(雄作)
解体屋のタイヤ臭へる秋暑かな(典子)

2016年8月27日
存分に月光を吸ひ砂の城(秀子)
秋風や引き戸は砂を噛んでゐし秀子(共選)
遅れしを詫びて今年も墓洗ふ(木屋)
白黒の家族写真や柿の秋(洋子)
足の砂砂で落して晩夏かな(布香)

秋暑し電気の笠に虫のあと(洋子)
ホルマリン匂ふ理科室夏終る(美雀)
乱反射して草原の蜻蛉かな(清吾)
ふくらみの足らぬ折鶴原爆忌(美雀)
電柱のなき空燕帰る空(秀子)

炎昼や虫歯にひびく工事音(すずめ)
打水を弾く青竹犬矢来(美雀)
鳥海山のもみぢ海へと急ぐかな(清吾)
いつの日か母になる子と遠花火(美雀)
休暇果つキラキラネームに送り仮名(洋子)
秋立つやきりんは風に首かしげ(清吾)
父母の墓石を照らせ盆の月(海峰)
夏痩せの子と狐狗狸をする夕べ(すずめ)
秋暑し寝癖の髪のとけぬまま(木屋)
老婦人老犬を引く処暑の夕(海峰)
製本の四隅にトンボ朝涼し(美雀)
イタリアで地震時折添水なる(秀子)
原爆忌プーさんの目のくろびかり(すずめ)
一日の終りに煙草虫しぐれ(洋子)
砂粒をばら撒きしごと秋灯(秀子)
子の城のくづるる砂場秋ゆやけ(すずめ)
雁渡しひつくり返す砂時計(布香)

水球のごとくに投げて青林檎(雄作)
土砂降りを来てたまたまの走り蕎麦(典子)

2015年8月22日
かの雀蛤と化し舌出せリ(清吾)
夕立や庇寄り添ひ蜑が家(啓子)(共選)
涼新た散骨よりも樹木葬(木屋)

白線を地に引く仕事鳥渡る(秀子)(共選)
月代や本屋は紙と木のにほひ(秀子)
毒舌に味出て来しよ生身魂(清吾)
肉のなきカレーを食べて終戦日(洋子)」

秋霖やかばんの底の舌下錠(輝代)
よく動く目口手足夏の子等(美雀)
饒舌におとろへのなし生身魂(啓子)
新涼や真白き皿にバラのジャム(布香)
原爆忌庭に雀のあつまりて(洋子)
猫舌の三代続く盂蘭盆会(布香)
蓼咲くやくるくる回る牛の舌(清吾)
唖蝉の止まりてゐたる原爆忌(海峰)
迎賓館の漆の手摺秋に入る(洋子)
湿舌や犬と走れば稲びかり(狐狸庵)

赤まんま友だち以上にはならず(雄作)
地虫鳴く映画の中の黒電話(典子)

2014年8月23日
丸木橋さいごは飛んで赤まんま(茂)
広島忌夕日が泥の川鞣し(秀子)
歯刷子はラップでくるみ盆帰省(茂)
一度でよろし心太の黒蜜(布香)

秋高し笛吹く人の爪清ら(輝代)
迎へ火の代りに母の好きな花(海峰)
こんなにも軽しふるさとの空蝉(秀子)
刷り上る学級新聞休暇明(啓子)
おくんちや笛聞けば撥おのづから(清吾)
八月九日死者も生者も立ち尽す(秀子)」

拭きあげて秋に開いてゐる座敷(茂)
新酒酌む李白の五言絶句かな(清吾)
秋雨や梅干の種とんがつて(布香)
ブラインド秋夕焼を薄切りに(布香)
街の子に山の子の顏休暇果つ(啓子)
トムソーヤーの刷毛と林檎を取り替へる(清吾)
倒木に苔のかがやく登山道(洋子)

ぎぎと動く蟹の看板日の盛(雄作)
缶詰の引つぱれば開く秋の空(典子)

2013年8月24日
濡れ縁の軋む音する初月夜(美雀)
釣瓶落し舌を鳴らせば猫が来て(秀子)
葛の葉のみなうらがへる誕生日(秀子)

素通しの原爆ドーム小鳥来よ(秀子)
磔刑の像の乾きや油照り(啓子)
終着駅に曳くトランクや盆の月(清吾)
銀縁の皿が良夜の水の底(秀子)」

秋澄むや滑舌悪きガイドなる(清吾)
逢ふたびに小さくなる母花木槿(啓子)
炎天や耳鳴りばかり聞え来る(木屋)
尊崇の意味を確かむ終戦日(海峰)
公園に遊ぶ子のなし草いきれ(洋子)
暑気中り野菜スープを濾すばかり(啓子)
鳥渡るピエロに青き涙痕(清吾)
熱風と共に急行通過せり(啓子)
鯔跳ぶや飛型点数競ふごと(清吾)
葉鶏頭胸のゼッケン泥まみれ(洋子)

基地ありて金網ありて蝉時雨(雄作)
猛暑日や鋏をひらくやうに千木(典子)

2012年8月25日
蜩や誰も帰って来ぬ団地(秀子)
群れなせば淋しくなかろ赤蜻蛉(美雀)
菜園の豆引くネイルアートかな(清吾)
秋澄むやウィーンの駅に中国語(洋子)

弓を引くポニーテールよ処暑の風(清吾)(共選)
盛り塩に厄日の雨のけはひかな(啓子)
ブルースのやうに萎れて夜の薔薇(秀子)」

乗りかへの階段長し休暇明け(洋子)
赤とんぼジムの窓辺に寄つて来て(海峰)
秋暑し影が剥がれてゆくやうで(秀子)
台風情報あばらのごとき雲並び(清吾)
塩あめを齧りかじりの盆用意(布香)
播州の池また池よ水澄めり(清吾)
いつも届かぬ弟の補虫網(啓子)
秋高し塩むすびから順にうれ(秀子)
Tシャツの首もやる気も伸びきつて(布香)
八月の薔薇は小さく愛されず(美雀)

駅一つ手前で降りて月の道(雄作)
稲妻の遠くミルクの吹きこぼれ(典子)

2011年8月27日
蝉捕りに弟子連れてゆく中学生(海峰)
秋立つや七味の小さき竹の匙(秀子)(共選)
リハビリの人は顏パス秋暑し(布香)
その話ポンポンダリアを活けてから(布香)

間引菜の味噌汁吸へば父のこと(布香)(共選)
古里はぐんぐん退る天の川(秀子)
小さき子の小さき泣き声鳥渡る(秀子)」

旧仮名で書かれた駅舎秋燕(美雀)
千里行く雲をながめて花野かな(美雀)
スニーカー下ろし立てなり秋遍路(洋子)
新豆腐の注文受けし黒電話(美雀)
眉毛にも白髪の見ゆる秋の声(木屋)
爽籟のたつ看護婦の胸の幅(西港)

象鼻杯傾けてゐる無想かな(木屋)
ふと見れば妻の横顔遠花火(西港)
晩夏光さうかあいつの命日か(西港)
八朔や鏡に復習ふ手の仕種(洋子)

鈴虫の里里里里田舎へ帰らうか(雄作)
空き罐に汐たまりゐる震災忌(典子)


<2006年8月~2010年8月>
2010年8月28日
逆縁を母に知らせず秋の雲(布香)
ケチャップを逆さに振れば秋茜(海峰)
熱帯夜柱時計が時を打つ(木屋)
逆立ちのできぬ子もゐる秋あかね(美雀)

セメダインの口が固まり夏終る(美雀)
新米や赤子は空を蹴り上げて(洋子)
星飛ぶやダンクシュートを三度決め(秀子)
地下街に川音ありぬ夏料理(布香)
一言も語らぬ母の原爆忌(洋子)
盆の月父の齢を超えにけり(啓子)」

稲架組むやぽかんぽかんと雲浮かび(秀子)
のつぺりと有明の海秋暑し(布香)
鬼やんま最後にどんな空を見た(美雀)
かまつかの丈伸びすぎし夕間暮れ(秀子)
もう父の居らぬ茶の間や盆支度(和夫)
雲の峰見上げてひとつ年重ね(豊)
葉をゆらす虫の小さき命かな(博文)

グラウンドのまだら乾きや鰯雲(雄作)
草よりも低き寝墓よ蝉の声(典子)

2009年8月22日
母は空父は沖見て終戦日(豊)(共選)
げた箱の上に電球地虫鳴く(布香)
二百十日のの字に曲る犬のふん(美雀)
老犬に声かけてゐる残暑かな(布香)

太古より待ち草臥れて山椒魚(秀子)(共選)
流星に音あらば聞き逃すまじ(啓子)」

炎昼の白旗を振る道普請(啓子)
花火待つ足もとに寄す波の音(啓子)
一切を焼いて終りぬ魂送り(秀子)
夏掛けはさびし私の形して(美雀)
炎昼やあたま突き出し亀一匹(木屋)
チェス盤のナイトの動き秋の夜(洋子)
草稿の空っぽファイル野分立つ(布香)
球児等の上いつの間の鰯雲(海峰)
水道の水を一杯帰省せり(布香)
袂から吹き分けてゐる秋の風(洋子)

蝉の羽化かほどの草に縋りゐて(雄作)
空蝉をころがす風が身ぬちにも(典子)

2008年8月23日
鼻の皮むけて阪神電車かな(美雀)
カーナビの知らぬ新道秋澄めり(共選)(サブリナ)
スーパーに悲鳴のあがる竈馬(布香)
新涼や夫婦ふたりの抹茶パフェ(洋子)

切り抜いた新聞に穴今朝の秋(サブリナ)
野分来る発条の手強き紙挟み(サブリナ)
新藁の日向のひほひ一抱へ(サブリナ)
鳥渡る自炊の本の増えにけり(布香)」

銀木犀遅れ癖ある友を待つ(布香)
あんパンの臍押してみる終戦日(海峰)
炊事場の小さき燈虫時雨(啓子)
かなかなや引継文書箇条書(美雀)
坂道を斜めに登り秋高し(西港)
組みかへる脚の白さや百日紅(木屋)
大花野引き返す道見失ふ(布香)
遠花火息子の友に会ひにけり(西港)
出たがりの虫も居るべし蚊遣香(木屋)

吸物の蓋のがうじやう虫集く(雄作)
日ざらしの梯子に増えて赤とんぼ(典子)

2007年8月25日
お忘れなく網戸は水も通します(布香)
秋暑し云ふこときかぬ花鋏(啓子)
近道は野良犬捨猫をみなへし(美雀)
蚊遣香昭和の人と言はれけり(サブリナ)
原爆忌鵯が卵を抱きにけり(美雀)

笹舟や父の縮に風吹きて(サブリナ)
石畳なほ磨りへりぬ原爆忌(サブリナ)
炎天の砂を袋に控へ捕手(西港)
父がゐて父に随ふ颱風裡(サブリナ)」

にがうりののんきさうなる軒の下(海峰)
焼きとりの串さき焦げて夏終る(布香)
島へ行く水牛の群天の川(西港)
すずめ蜂の空巣残りぬ八月尽(布香)
島の子のはきと挨拶ハイビスカス(西港)
坂下に母の佇む油照り(木屋)
休暇果つ娘は髪を染め直し(洋子)
風鈴を吊るにまかせし子沢山(美雀)
自由研究蝉穴に水満たす(雄作)
仰向きの蝉に瀕死の空があり(典子)

2006年8月26日
人声の消え波音と新松子(啓子)
ニ百十日バスの座席が沈みけり(雄作)
路線図の色のとりどり小鳥来る(啓子)
片方のピアス残りて休暇果つ(啓子)
山積みの本の埃や秋に入る(西港)

銀漢や熱のさめゆく登り窯(サブリナ)(共選)
颱風や血圧計の電子音(豊)
年寄に銀木犀の風吹けり(サブリナ)
墓洗ふ先祖の部屋に通気孔(豊)」
赤茶けたビルの骨組み雲の峰(木屋)
蓮の実飛ぶ何もなき日の夕暮れに(布香)
人事課は人の生き死に油照り(海峰)
夫かたり妻うなづけり星月夜(美雀)
捩れをる受話器のコード盆の月(布香)
朝霧や赤いヤッケは夫らしき(洋子)
妻と老い並びて座る今日の秋(きよし)
信号を待つてゐる間の赤とんぼ(悦子)
護謨の葉をていねいに拭き熱帯夜(雄作)
小鳥来る受胎告知の画の中へ(雄作)
休暇果つ口内炎を持つたまま(典子)


<2001年8月~2005年8月>
2001年8月25日
人ひとり降りて無人駅も秋(美雀)
棒立ちのマウンド譲り夏終る(西港)
無患子の玉五つ六つ古机(青鵬)
老犬の穴堀続く晩夏かな(布香)
灯を消して稲妻を見て少し酔ふ(サブリナ)
水澄んでやがて心も定まりぬ(ベアトリス)

お端折りの丈の短さ夕涼み(美雀)
初老への百の階段盂蘭盆会(海峰)
振り向いた君の頭上に天の川(西港)
ひまわりの上の青空限りなし(布香)
妻しばし寡黙となりて栗を食む(青鵬)
アサガオの蔓引っ剥がしすっとせり(山佐)
塩辛とんぼ洗濯物と吹かれけり(松ちゃん)

2002年8月24日
母を看て色なき風に気付かざり(海峰)
手花火や男の影に飲み込まれ(サブリナ)
焼香の列に居る間の吾亦紅(青鵬)
全員でボール磨いて夏終る(西港)
筋ばりし母の手を取る処暑となり(海峰)
香水を変へてこの恋終りにす(海峰)

夏の月迷ひ込みたる干拓地(布香)
昼顔や緊張感のない乳首(西港)
雲の影グランドに降り盆休み(美雀)
口絵だけ見ている夏の昼下がり(布香)
色付いてゐる初七日の烏瓜(青峰)
ピアノ弾くBCGの痕の汗(布香)
からっぽの暑さ残りて彼もどる(洋子)
掌に苔の湿りや虫すだく(サブリナ)
白芙蓉風呂敷口で結び足す(松ちゃん)

2003年8月23日
夕日ごと抱へ上げたる夏帽子(西港)(共選)
秋風を体してゐたり鉋屑(雄作)
麻の服正しき皺のありにけり(布香)
まくなぎの担ぐものなき祭かな(雄作)
炎天へ出て行く眉をつくりをり(雄作)
八月十五日とほくが見える筈(雄作)

朝の露アキレス腱の際だてり(サブリナ)
馬の目と言葉交して今朝の秋(翔)
旧姓を呼ばれ振り向く盂蘭盆会(美雀)
行く夏の母の手足の細かりし(海峰)
鳳仙花生涯かけてできるもの(きよし)
田を分けて一輛列車雲の峰(西港)
楽しみは書塾帰りのところてん(平助)
故郷とは夏大島と古き下駄(お茶の水博士)
また来ると馬鈴薯みっつ濡れ縁に(サブリナ)
網舟や海は漁師の畑かも(海峰)
先を行く夏目雅子の白日傘(雄作)
新涼や外から見えるエレベーター(松ちゃん)

2004年8月28日
ビルの間の栞のような遠花火(布香)(共選)
秋風の流るるメロンパンの膚(雄作)
レッスンの10分休み蝉時雨(西港)
花火待つ水面の魚と三脚と(西港)
新豆腐浮かせ置く水静まれり(サブリナ)
いなびかりそのあとの音待つてをり(啓子)

二人来て一人見あぐる花火かな(サブリナ)
肩の骨だしてつかまる浮輪の子(啓子)」
無花果を並べかへたる朝の市(美雀)
少年へ九月の海が広がれり(洋子)
盆の月ゆるき鼻緒の朴歯下駄(美雀)
母の初盆爆竹困るほど焚けり(海峰)
頬かすむもの稲の香とあきあかね(木屋)
カレーライスの水を飲み干す原爆忌(布香)
昨日より色の増したるその石榴(木屋)
水澄むや朝の拍手風に乗り(きよし)
茄子の馬残りの茄子を炒めをり(雄作)
モハンムド西日へ身体二つ折り(雄作)
天高し大の字に干す柔道着(典子)

2005年8月27日
去ぬ燕デッキ刷子を握りしめ(雄作)
甲板に積む綱堅き秋の潮(啓子)(共選)
虫を聴く会の紅茶が冷めてゐる(雄作)
ランチA置き看板に秋刀魚の絵(布香)
看板の多き道筋秋の風(きよし)
盆の客戻りし部屋の広さかな(啓子)

クロスワードの縦書き英語蚯蚓鳴く(布香)
かなかなや座薬じわりと効きはじむ(豊)
新涼や歯ブラシの先はねてをり(海峰)
図書館のカレーの美味し文化の日(豊)」
子供には子供の秘密茱萸含む(サブリナ)
運動会教師担がれ運ばるる(豊)
渓谷の流れまつすぐ秋の蝶(美雀)
今朝の秋板間の板がぎいと鳴る(サブリナ)
炎天に干すまな板の裏表(洋子)
星飛ぶや心耳のごとく壷の耳(雄作)
台風一過家猫のあふむけに(雄作)
秋風が吹く心臓のふいご形(典子)

戻る